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the dialogue #3
『POZ』で、日本中のオフィスに「運動習慣」を。トレーニング監修者たちとの対話。

quantumのfoundersが、共に0から1を生み出そうとするパートナーや、尊敬する起業家、有識者との対話の中から、新規事業の可能性や、成長へのヒントを探っていくシリーズ [ the dialogue -つくりだす人との対話- ]。

quantum発のセルフ・コンディショニング・サービス 『POZ(http://poz.co.jp/ )』事業責任者の金学千がヘルスケアテックの可能性を掘り下げる連載(全3回)の3回目。

今回は『POZ』の肩スッキリコース、腰スッキリコースなどにヨガのコンテンツを提供してくれている〈スタジオ・ヨギー〉のエージェント事業部シニアマネージャーを務める菊池可織さんと、スクワットコースにコンテンツを提供してくれているクロスフィットトレーナーの板谷友弘さんを訪ね、3者による対談を実施。『POZ』を共に作り上げてきたパートナーとも言える両者の、ヨガやトレーニングを指導する側の立場も踏まえながら、今後の可能性や課題などについて議論を行った。

 お二人に、これまで色々ご協力いただいて、『POZ』は現在複数の企業で実際にオフィスワーカーの方々に使っていただいているんですが、テクノロジーを使って、セルフ・コンディショニング・サービスを作ります、という話を最初に聞いて、率直にどう感じられましたか?菊池さんには確かまだ雛形も何もない、紙にアイデアを書いただけの状態でご提案した気がするのですが。

菊池 すごくチャレンジングな企画だと思いました。私たちもオフィス向けの出張ヨガなどは色々とやってきて、参加者の皆さんからはご好評を頂くのですが、どうしても着替えの手間や時間が合わないなど、そこにいる全員にサービスが行きわたらないハードルがあった。『POZ』ならそのハードルを簡単にクリアできるんじゃないかと、最初にお話を伺った時に思った記憶があります。

 実際に完成したものを見て出来栄えはどうでしたか?特に、姿勢解析システムなど、姿勢のプロ目線で見るとどうなのかな、と。

菊池 想像以上に洗練された物が出来たなって驚きました。デザインの面でも、姿勢を解析するシステム的な部分、でも。



 制作を進める中で技術面を詰めていくうちに、筋トレのスクワットの動きなども姿勢解析ができることがわかってきた。その時点でクロスフィットトレーナーの板谷さんに監修をお願いしたんですよね。

板谷 最初は率直に「これでどこまで正確にトレーニング中の姿勢が解析できるんだろう?」と思っていました。回数はともかく、フォームの細かい部分で。でも実際にやってみるとかなり正しく解析してくれますよね。正直、想像以上でした。

 お2人は基本的にクライアント=お客様と対面する形でフィットネスを提供しているじゃないですか。そうしたフィットネスジムやヨガスタジオと『POZ』のようなサービスは果たして共存しうるのか?と常々考えているのですが、そのあたりについてはどう思われますか?

菊池 100%共存可能だと思います。どうしてもジムやスタジオに出向くって限られた方しかできない事だと感じていて、だから『POZ』のようなサービスを通じて少しでもヨガに、体を動かすことに親しんで貰いたいと考えています。私たちから見ても、まだヨガを「特別な物」として捉えている方は多いし、「あ、こういう形でヨガをやってもOKなんだ」って気がついてほしい。あと、以前はスタジオに通えていたけど、子育てなど様々な理由で今は難しいという方も多い。そうした方も気軽に活用できるこういうサービスがもっとあったらいいのにと思いますね。

 ヨガは本来、自分と向き合うことが目的のひとつだったりしますから、『POZ』とも親和性が高いのかもしれませんね。

 『POZ』はユーザーがカラダの調子を整えたいなと感じたタイミングで使うシステムで、現状はオフィスワーカー向けのサービスですけど、好きな時に好きな場所でセルフコンディショニングを行うことをもっとポピュラーにしていきたいと思っているんです。

菊池 ユーザーさん側も、ヨガなりクロスフィットなりのお試しの意味で使っていただいても全然いいし、「私、頑張ってジム通ってます」っていう感じに抵抗のある方もいらっしゃるので、「『POZ』でこっそり毎日ヨガやってます」くらいの感じも全然ありだと思うんです。結果的に続けることでコンディションは良くなっていくはずですから。

 その感覚って本当に大事で、私も月2~3回程度ですけど、スポーツジムでベンチプレスを30分程度やっているんです。でもそれはマッチョになりたいとかではなく、あくまで心身をスッキリさせるためのもの。終わった後はプロテイン飲んだりしてますけど(笑)。そういう感じで日常の中に運動があるのってすごくいいことだと思うんですよ。

菊池 スタジオなりジムに通うって、実は結構ハードルの高い行為なんですよね。だから何もガチガチにやる必要はなくて、そんな緩い感じでいいんだと思います。人によってコンディショニングをしたい、こんなカラダを作りたいなど、運動の目的はバラバラだし。

板谷 ヨガはほかの多くのトレーニングと違って正解を求めないので、結構セルフ向けですよね。ポーズひとつとっても、その人の出来る所まででOKだったりするし。

菊池 そうですね。スタジオ・ヨギーでは、ヨガのほかにピラティスもメニューとして提供しているんですが、私はヨガを文系のエクササイズ、ピラティスを理系のエクササイズと個人的に呼んでおりまして。つまりピラティスはひとつの目的に対してこの動きを正しくやる、というのが明確に決まっていて、道筋がはっきりしている部分がある。ヨガはその日のコンディションや個々のペース、体力に合わせてコントロールしていくし、メンタルを重視する側面もあるので。

 筋トレもそんな感じですよ。先週は軽々持ち上げられたウェイトの重量が今週は挙げられない、といったケースもよくあるのですが、それはフォームのちょっとしたズレだったり、メンタルが影響していたりしますから……。見た目よりもセンシティブなのかもしれませんね。


運動習慣化を支援するツールとして、この先『POZ』はどう進化すべきか?

 『POZ』はあくまでオフィス内で使うことを想定して、少し時間があるタイミングで始めてサッと終えられることを重視しているのですが、システム的にはトレーニングのログを残しておき、それを基に動きを点数化するといった仕様も十分可能でいまもそうした機能を入れるべきか検討しています。でも、果たして『POZ』のユーザーにそこまで必要なのか?という疑問が常にあって。

板谷 クロスフィットで考えると、そうしたログ機能があるとすごくありがたいですね。実際に自分はExcelを使ってトレーニングのログをつけているんですけど、それが『POZ』の技術でできれば、お客さんに教える上ですごくいい指標になると思います。同じワークアウトでも、1か月前と今日ではここの部位をしっかり使えるようになったとか、〇秒速くできるようになったとか。そういった部分が記録の蓄積に基づいて客観的データとして示せると、お客さんにとってもモチベーションアップにつながるのではないかと。

 なるほど。

板谷 特にクロスフィットに来る方は達成感を求める傾向が強いので。個々の能力によりますけど、懸垂1回、縄跳びの二重跳び1回でも大満足して帰られる方も多いので、そうした指標は多いほどいいのかも。

菊池 ヨガに関してはそうした指標を出すのが難しいかもしれないですね。その日のレッスンなりプログラムで心身が満たされたか感覚的に捉えるのが大事なので。もし可視化された指標を出すとしたら、まずは主観的に「今日は〇点だった」と分析したのちに、その日の動作や姿勢の解析、心拍数の上下など客観的データを示して、主観との差を見ていく。そうした活用方法は考えられる気がします。あくまで感覚を重視しつつ、そこに『POZ』の指標を加えていく感じですね。でも例えばiPhoneがカメラロールに保存している画像を1年後のその日にアルバム風に示してくれるように、『POZ』に映像や分析のデータが蓄積されれば、そうした形でふとした時に昔の自分の動きを振り返ったりできるのかもしれない。それはすごく可能性のある話だと思います。

 IoTの進化の功績って、そうした「忘れていたことを記録の力で思い出してもらう」可能性を広めたこともあると思うんですよ。例えばスクワットであれば「先週は40回中24回がいい形でした。今回は25回を目指しましょう」。そういうデータに基づいたアドバイスが手間をかけずに瞬時に行える。そうした半歩先の目標もデータベースから示してあげられるのは大きいのかなと。でも、菊池さんはじめ今回協力くださったインストラクターの皆さんがこの企画に賛同してくれたのはありがたかった。ヨガって「流れ」や「シークエンス」を大切にする世界じゃないですか。その動きのいくつかを切り取って『POZ』に落とし込むというのは、本質的な部分と離れてしまうのかなって最初は不安でした。

菊池 限られた動きの中でいかにヨガに欠かせない「流れ」を作っていくか。『POZ』のプログラムを作る上でそのあたりは金さんとも一緒に何回も検証を重ねましたよね。カラダの向きひとつとっても左右の違いで解析に影響が出たりするので。でも最初にも言いましたけど、想像した以上にいい形になったなーと感動しました(笑)。
もっとシステムが進化すれば、ヨガのグループレッスンを『POZ』で動作解析できる時代がくるのかもしれない。その場で全員の動きを分析して「いいね!」ってヘッドフォン経由で知らせてくれたりとか。

板谷 『POZ』の動きの分析や評価の精度が今後どんどん高まっていくとすれば、クロスフィットのすべてを再現するのは無理だとしても、たとえば10個の種目をランダムに抽出して連続でやりましょうと提案し、分析・評価する、みたいなことはできるようになってくるかもしれないですね。現段階では法人向けですけど、いずれは個人ベースでもサービスを提供できたら画期的ですよね。

菊池 そうなったらすごくインタラクティブだし、従来のトレーニング動画サイトなどと、より一層差別化できるのかも。

 『POZ』で体を動かし続けているうちにヨガスタジオやクロスフィットに行ってみようかなって気になる人も出てくるはずだし、何より日常の営みの中にヨガやトレーニングが自然に入っていく。『POZ』はその入り口になればいいなって思っています。体を動かすきっかけは多ければ多いほどいいですから。

菊池 私もそうですけど、人間ってみんな怠け者なんですよ(笑)。でも『POZ』のようにインタラクティブな形であれば「あ、やらないと」って思えるんです。だから皆さんを少しだけ後押しする存在として、非常にちょうどいい存在なのかなって思っています。中には「ヨガはやってみたいけど、大勢の中でやるのはちょっと……」という方も結構いらっしゃるので、そういう人の気分を満たしてくれるというか。

板谷 運動はやらないよりはやった方が絶対いいので(笑)。「これだけやれた」って成功体験がほんの少しでもあれば、それが積み重なって運動以外のいろんな領域の自信につながるはず。運動習慣化を支援するツールとして『POZ』を導入した企業は、業績も上がるかもしれないですね。

 『POZ』を導入している富士通ゼネラルさんの様子を見ていると、利用してポイントをためるとドリンクがプレゼントされるなど、うまく社員の皆さんに使ってもらおうと工夫されていて、実際に利用者も多い。結果的に、社員のコミュニケーションツールになっているんですよね。誰かがやっていたら周りもやりだしたり、今まで交流の少なかった社員が話すようになったり……。中には部下が上司に「動きが悪いですね~」と冗談を言ったりもしている。業績アップまでは保証できませんが(笑)そういう場が作れるメリットもあるのかなと。

富士通ゼネラル取材時、実際に社員の方が『POZ』を使用するシーンにも遭遇した。

菊池 企業向けにヨガの体験会などをやると、圧倒的に女性の方が参加者が多いんですよね。男性は人目が気になったり、やるならちゃんとスポーツウエアに着替えて、時間をかけてやりたい傾向が強いのか……。でも、スーツを着たままでも構わないので、少しの時間でもカラダを動かす習慣がつけば、絶対いいサイクルが生まれると思うんです。

 『POZ』をただ導入してもらうだけじゃなく、いかに、ポジティブに使ってもららえるか。そしてその使い方をいかに継続してもらえるか、このあたりが今後の課題ですね。お二人にも引き続き協力いただいて、日本中のオフィスに「運動習慣」を届けていきたいですね。


<プロフィール>


板谷友弘氏 
クロスフィットトレーナー

2013年まで社会人リーグでアメフトをプレー後、2014年よりクロスフィットを始める。
2014年から-2018年9月までは社会人生活の傍クロスフィットを続け、国内外の大会に参加するとともに、複数のトレーナー資格を取得。2018年10月よりクロスフィットトレーナーとして活動。

菊池可織氏
スタジオヨギー エージェント事業部シニアマネージャー

金融業界からヨガ業界のトップであるスタジオ・ヨギーへ転身して13年。ヨガインストラクターを育てるヨギーインスティテュートのマネージメントを担当ののち、オフィスへヨガプログラムを届ける法人部門で出張クラスやクライアントに合ったプログラム提案を担当。日々学び続けるインストラクターのスキルと社会のニーズをマッチングできる瞬間が何よりの楽しみ。

金学千
POZ事業責任者 / qFoundersAcademy事業責任者

博報堂にてアカウントプラニング職・ストラテジックプラニング職を経験した後quantumへ参画。イノベーション開発に特化したファシリテーションのプロフェッショナルで、大企業とスタートアップとの共創を目指したワークショップを数多く企画運営している。プラニングスキルとファリテーションスキルを掛け合わせ、自らまだ見ぬ体験創造/新規事業創造を目指している。 2014-2016京都大学 グローバル起業家教育プログラム(GTEP) 教育プログラム開発 / 講師担当