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the dialogue #5
ストーリーから選ぶ花束、F. [éf]が花と人の幸せな体験を増やしていく。 フローリストと語る、ローンチからの“物語”

ストーリーから選ぶ花束のD2CブランドF. [éf](エフ)は、11月18日でローンチから1周年を迎えました。シーズンごとに提供される3つの物語から花束を選ぶことで、花と人の新しい出会いを提供してきた同ブランドは、「花を買う」「花を贈る」という体験を身近なものに変えていくためのオンラインサービスとして始まりました。

「花をもっと、ユニセックスなものにしたい」というファウンダーの思いから誕生したF. [éf]は、花業界としては異例といえる、男性をメインターゲットに据えたブランドでもあります。なぜ、このようなコンセプトに至ったのか。そして、実際、ローンチからここまでの反響はどうなのか。

F. [éf]のファウンダーであり、quantum ベンチャーアーキテクト シニアマネージャーの森本智子が、同ブランドにPartner Flower Shopとして参画いただいている、フラワーアトリエ「figue」(フィグ)の鈴木梨紗子さんとの対談で振り返ります。

■「物語のある花束」というコンセプトの原点

――F. [éf]は花束の背景にあるストーリーに焦点を当てたブランドです。このユニークなコンセプトは、どこから発想したのでしょうか?

森本:私はずっとフラワーデザインや生け花をやっていたこともあり、いつか花のサービスを作りたいと思っていました。どんなサービスだったら可能性があるか、どんな課題を解決できたら嬉しいか、「figue」の鈴木さんも含め、花に関わる様々な方にインタビューさせていただいていたんですね。そこで伺ったお話も参考にしてアイデアを出しては捨て、また練り上げてといったことを繰り返していました。F. [éf]に辿り着く前のアイデアの段階でも、20とか30は考えたと思います。

大切にしたのは、ユーザーだけでなく、フローリストさんなど花に関わるステークホルダーもハッピーになるものにすること。そして、女性だけでなく、男性にも花を身近なものに感じてもらい、花の需要を広げていくことを目指しました。

――F. [éf]以前には、どんなアイデアが?

森本:例えば、フローリストさんをユーザーの自宅に派遣して、家の中でプロに装花してもらえるサービスです。花業界ではデジタルが積極的に使われていない印象があったので、オンライン上で個人のフローリストさんとユーザーがマッチングできるものを考えました。

これは実証実験もしました。ただ、ここで新たな課題が見つかりました。ユーザー側が、自宅に知らない人を上げることへの抵抗感はあるかもしれないとは予想していたんですよ。でも実際にはそれだけじゃなく、フローリストさん側からも「個人宅に伺ってそこで作業することに対する心理的なハードルが高い」という声があり、派遣を伴うサービスには限界があると感じました。

その一方、男性のユーザーさんに思いのほか好評だった、という発見もありました。それを機に改めて周囲の男性陣にヒアリングしてみたところ、そこでも男性のほうが花選びに困っているというデータが得られたので、もっとオンラインに寄せつつ、男性をメインターゲットにしたサービスにピボットして考えてみることにしたのです。

――つまり、男性向け、という点がF. [éf]の原点?

森本:男性でも購入しやすいユニセックスなサービスで花束を提供することが原点ですね。というのも、女性の場合は、フローリストさんと会話しながら花をひとつひとつ選び、花束に束ねてもらう、その過程も含めた「花を買う体験」に魅力を感じている人が多いんです。だから、すでに出来上がったラインナップから選ぶF. [éf]のようなサービスは、女性にはあまり刺さらなかったりします。

しかし、花に詳しくない男性にとっては、花屋って、入るのさえためらう場所だったりします。できることなら花屋さんに全部任せたいけど、花屋に入っても、何を話したらいいのか分からない。そんな理由で男性が花を買う機会が失われてしまっていることに改めて注目したんです。また、花を買いたくても、忙しくて花屋さんが開いている時間に帰れないという声も多く聞きました。そこでオンラインで、3種類の中から花束を選んでもらうサービスにしました。オンラインなので時間を気にせず買うことができるし、3種類に厳選してあるので男性にとっても迷う必要がなく、それでいて自分で「吟味した」と感じてもらえるように工夫しています。

厳選されたラインナップは、2-3ヶ月ごとに新しい商品へと入れ替わる。(こちらは現在発売中の3商品。F. [éf]webサイトより)

F. [éf]のコンセプトでもある花束と紐づけられたストーリーについては、男性にヒアリングを重ねる中で、「プレゼントする際に、なぜこの花束にしたのか説明したい」という声が多かったことが影響しています。あとから花言葉を検索して「こういう理由で選んだんだよ」と説明している人がリアルにいらっしゃったんですね。ほとんどの男性がプレゼントした女性から、「どうしてこれにしたの?」と聞かれて、答えに詰まって困っていることもわかりました。

そこで「美しい」「かわいい」といった、女性的なセンスで語られがちだった花に、ストーリーというロジックを加えることにしたんです。言い換えるなら、「この花束はどういうものか」という意味を納得したうえで購入していただけるようにしたのです。実際、1年間やってきて、母の日など特別な日を除いてF. [éf]のユーザーの8割は男性。仮説に基づいたサービスの設計は間違っていなかったのだなと思っています。

花束と一緒に、メインの花材の花言葉と、その花言葉から紡ぎ出されたストーリーが記されたカードが届く。
花束を選んだ理由を伝えやすいと、ユーザーからも好評。

■最初はフローリストとファンとして出会った

――鈴木さんはどのような経緯で参加されたのでしょうか?

鈴木:森本さんからは、ブランドのアイデアが固まった段階で相談いただきました。ただ、F. [éf]の前から本当に長い間いろんなお話をしており、根本的な「こういうものがあったらいいよね」という価値観は共有していると思います。女性は花そのものより、「パートナーが私のために選んでくれた」というエピソードがうれしかったりするので、「物語のある花束」というコンセプトを聞いたときにも、なんて素敵なんだろうと素直に感じました。

――長いお付き合いとのことですが、そもそもの出会いは?

森本:5年前ですね。

鈴木:そんなに経ちますか。時が経つのが早くて怖いですね(笑)。

森本:そうですね(笑)。きっかけは私がまだ前職のコンサルティング会社にいたときのことなのですが、当時よく行っていたレストランの花がいつも素敵で、あるとき思い切って装花を担当された方を聞いてみたんです。それが鈴木さんでした。その日のうちにご連絡して、お花を習わせてもらうことになったんですね。

――では、鈴木さんのお花に惚れて。

森本:まさしく、最初はファンとしてお会いしました。せっかく洋花を勉強するなら、自分の好きなフローリストさんから習いたいと思っていました。突然すぎて鈴木さんはびっくりしたと思いますが(笑)。

鈴木:個人レッスンの依頼そのものが初めてだったので驚きました(笑)。でも、嬉しかったですね。「私で良ければ」と答えさせていただきました。

森本:それから月1でレッスンをしてもらう期間が何年も続き、その中でいつかこんなお花のサービスがやりたい、というような話も鈴木さんとしていました。正式にF. [éf]に関するご相談をしたのは、最終的に構想が固まった去年(2019年)の春頃です。

鈴木:もともと森本さんからは、お花だけじゃなく、お花の業界に対しても熱いものを感じていました。お花って生活必需品ではないから、良くも悪くも後回しにされがちなものだと思うんです。私はプロの花屋として、もっと花を生活に根付いたものにしたいと思っていました。特に男性の生活において、今はまだまだお花ってどうしても優先されないものです。でも、男性も日常的にお花を買うようになってほしい。花自体の魅力を感じてもらえたら、そのうち、贈り物だけでなく、男性も絶対に自分でお部屋に花を飾るようになると思っています。

しかし、私はそこまで実際には手が回らなくて、誰かがそういうサービスを作ってくれたらなあと常日頃から考えていました。そんなときにF. [éf]のお話を聞いたので、むしろ、「どうしたら参加させてもらえるかな?」と考えていたくらいです(笑)。

森本:そんなそんな(笑)。F. [éf]には鈴木さんのデザイン力は欠かせないと思っていましたし、実際に女性だけでなく、メインターゲットである男性のユーザーからも高い評価をいただいています。


■記念日だけでなく、プロポーズ用の注文も

――F. [éf]がシーズンごとに提供する3種類の花束は、どのように作っているのでしょうか?

森本:まず、花束ごとに2種類のメインとなる花を決めます。ストーリーも妄想で作っているわけでなく、そのメインとなる花の花言葉を軸に、コピーライターと一緒に練り上げています。その過程もどちらが先ということはなくて、ストーリーづくりと花束のデザインを並行して行い、私が鈴木さんとコピーライターの間を行ったり来たりしながら作り上げています。

鈴木:デザイン面でのF. [éf]らしさでいうと、やはりメインターゲットが男性なので、かわいらしすぎないもの。F. [éf]では「芯のある花束」と呼んでいるデザインを目指しています。とはいえ、プレゼント需要の場合は、実際に貰うのは女性です。女性は「きれい」「美しい」だけでは満足しないことをよく知っていますから、細かい部分の品質管理にはすごく気を付けています。

茎の処理、結んでいる紐、花を飾ってからの水のにごり方の速度まで、ひとつひとつに気をかけ、手を抜きません。女性はプレゼントされた花束の値段を絶対検索しちゃうので「この値段でこのクオリティか」と思われることだけはないようにしています。正直、いつも緊張しながら束ねています(笑)。

森本:デザインや品質に対する信頼感は、F. [éf]を始める前から鈴木さんと花を通してコミュニケーションしてきたことが役立っていると感じます。

鈴木:「好きの共有」からお仕事につながったので、すごく近い感覚で働けるのは作り手としてもやりやすいですし、そこにズレがないことがF. [éf]が評価いただいている理由にもなっていると思います。

男性が選択しやすく、女性も嬉しいデザインがF. [éf]の目指す「芯のある花束」。
こちらは現在販売中の”Reflect”。左・Regular、右・Small

――1年間サービスをやってきた中で発見したことはありますか?

森本:想像以上にお客様がストーリーを読んで選んでくださっています。それに、ここまでユーザーが男性に偏るとも思ってはいませんでした。なんだかんだ言っても、女性が半数くらいにはなると思っていたんですよ。「花をもっと身近に」「花をもっとユニセックスに」という目的からすれば、ポジティブな結果ですね。

鈴木:本当に男性が買ってくれていると分かったことで、デザインもやりやすくなりました。

森本:購入目的としては記念日のプレゼントが多いのですが、年間を通して、プロポーズ用のお問い合わせもいただいています。「特別な日だから、意味のあるものを贈りたい」と思ってくださっているのでしょう。ありがたいと同時に、これほどプロポーズの需要があるとは思っていませんでした。人生の一大事における贈り物を手掛けるわけなので緊張します。もちろん、鈴木さんのほうが大変だと思いますが。

鈴木:それはもうドキドキです。

――オンラインのサービスということで、配達の際に使う箱にもこだわっているとか。

森本:重要な顧客接点ですから、開封時の体験の質も高めるためにオリジナルの箱を作っています。花束は配達中に倒れないよう、土台にガッチリ固定しています。しかし、ぐっと力を入れないと抜けないので、箱から取り出すときに崩れてしまうことがよくあるんです。そこで、箱の真ん中あたりに切り取り線を入れて、中に手を入れなくても、きれいに花束を取り出せるようにしたりといろいろ工夫をこらしています。そのあたりも、実際に段ボールでいろんなパターンの箱のプロトタイピングをしてみて、ベストだと思うもので今は提供しています。

小さなお子さんのいる家庭もユーザー層として想定しているので、お子さんと一緒に開封していただいても、楽しい体験になると思います。箱は今後も改良を重ねていきたいところですね。

――繰り返し利用する方も出てきている?

森本:そうですね。年に1回の誕生日のプレゼントに買われた方が、初年度から2回、3回と利用されるケースも出てきています。思いのほかリピーターが多く、すごく幸せなことだと感じています。


■「花=女性」というイメージを変えたい

――F. [éf]を通じて、花業界をこう変えていきたいといった目標はありますか?

森本:私は業界の外の人間なのでおこがましいですが、どの業界もデジタルシフトしている中、フィジカルな価値観が重視されているお花業界に対して、こういうデジタルのサービスを作ることで、お花の新しい売り方を提示していきたいと思っています。

それに店舗の花屋だと、どうしても業界平均で3、4割の廃棄が出てしまうと聞きます。しかし、F. [éf]はお届け希望日の5日前までに注文をいただき、そこから仕入れる形式で運営しています。だから、店舗に比べると廃棄はかなり低い仕組みとなっています。

鈴木:廃棄は業界全体の問題であり、私たち花屋にとっても、すごく胸が痛むことなんです。しかし、お花を売るためには単価を下げないといけません。そのためには大量に仕入れる必要がある。大量に仕入れるから売れ残る。かといって、注文を減らされたら今度は農家さんが困ってしまいます。

ということは、この状況を変えるには、最終的にはお花を飾ってくれる人を増やしていくことが必要なんです。それにコロナの影響で、最初はイベントなどで使うお花のロスが問題になっていましたが結果的に今はお花の需要がとても伸びているんですよ。お家にいるばかりだと気分が滅入ってしまうので、近所で花を試しに買ってみたら、思ったよりも良かった、それ以降定期的に花を買うようになったという人がたくさんいたのです。これをきっかけに個人の需要をもっと広げていけたら、業界を変えることにつながるのではないかと思います。

森本:個人の需要を広げるためにも、花に対する見られ方を変えたいというのは、F. [éf]のテーマとしてずっとあります。結果的に男性をメインターゲットとしていますが、もともと私は、鈴木さんの装花のユニセックスなデザインに惚れ込んだように、花の魅力は女性的なものだけではないと思っているんです。

私が「生け花をやっています」と話すと、必ずといっていいほど「お嬢さんなんだね」と言われてきました。しかし、花にはそもそもその花自体がかっこいいものやクールなものもたくさんあります。男性でも生け花をする人はいるのに、どうしても「花=女性」というイメージになっています。F. [éf]を通じて、そこを変えたいのです。

私はF. [éf]によって、花の多様な魅力を知ってもらいたいと思っています。そうすることで男性が女性にプレゼントするときも「バラ100本」みたいな、いつの頃からかなぜか定番みたいに扱われている選択肢のほかにもいろんなチョイスがあり、そっちのほうが実際は女性からも喜ばれることを知ってほしい。そして、その先には、男性が男性の友人や同僚に、あるいは自分のために購入することも当たり前な世の中を作っていきたいですね。


ローンチ1周年に合わせて公開された、F. [éf] ブランドムービー


F. [éf]のオフィシャルサイトはこちら https://f-bouquet.com/
F. [éf]のInstagramはこちら https://www.instagram.com/f_flower_bouquet__/



<プロフィール>

森本智子(quantum Venture Architect Senior Manager / F. [éf] founder)
外資系コンサルティング会社を経てquantumに参画。プロジェクトマネージャーとして、新規事業開発における企画・実証実験の推進・ローンチまで幅広く携わるほか、大企業内での起業家育成プログラムの立ち上げ・実行支援も手がける。主な仕事にPanasonic社とのIoTプロダクト「eny」「Wearable Maker Patch」、JR東日本の「ON1000」プログラム、大手食品メーカーとのヘルスケアアプリ開発など。趣味は音楽鑑賞、フラワーデザイン・生け花、イラストレーション。2019年11月、ストーリーから選ぶ花束のブランドF. [éf]を立ち上げ。


鈴木 梨紗子 氏(figue director/Flower Designer)
たくさんの花があることを知り花の世界へ。生花店にて花の知識、技術を学ぶ。ギフトフラワーをはじめ、レストランウェディングやハイブランドのイベント装花経験を積み造形理論が発達しているドイツへ短期留学。花に対する世界観を広げ独立。
日々のギフトフラワーやオリジナルウェディングなどの空間装飾から現在ではCM広告やアパレルブランドの撮影スタイリングなども手がけ、花を使った表現は多岐にわたる。パートナーフラワーショップとして、F. [éf]をローンチから支える。