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スタートアップスタジオからこんにちは

私たちは2019年4月1日より、株式会社博報堂の子会社となり、CIも「quantum」へとリニューアルしました。この節目、いわば第二創業とも言えるこの時期に、新しくなったquantumが目指すものについて、弊社代表の高松 充が語る連続インタビューの3回目。

最終回の今回は、創業時に掲げたスローガン「Be a Founder」を加速するために、今後予定している「Founders First」の取り組みについて語ります。



―― 前回のインタビューでは、今後は「quantumの社員が中心になった新規事業の立ち上げ」や「スタートアップ企業への投資、共同創業、ハンズオン支援」にも、より注力していくと語っていただきました。しかし、それだけ事業領域を広げることには会社としてのデメリットもあるのでは?

高松 なぜ、領域の異なる色々な事業に手を出すのか、領域を絞った方が知見も溜まるし、収益性も良くなるのではないかと、よく聞かれます。確かに、短期的に考えれば、ご指摘の通りだと思います。

しかし、以下の2つの理由で、敢えて事業や技術の領域を限定していません。
quantum創業のルーツは、私がTBWA HAKUHODの経営企画担当として、広告会社が両利きの経営を実現するために、どんな知の探索が必要かを考えた2009年に遡ります。既存の広告事業との両輪で、広告会社の成長を支える新規事業とはどんなものか、広告会社の強みが活かせる新規事業とは何かを考え抜きました。そして、紆余曲折、悪戦苦闘を重ねた結果、2011年に、我々が目指すべき新規事業のコンセプトを「Human-Centered Open Innovation(HCOI:生活者発想のオープンイノベーション)」と決めました。HCOIとは、技術主導の製品開発ではなく、生活者のニーズを満たす製品・サービスのアイデアを考え、必要な技術や技巧を世界中から集めて社会実装するということです。HCOI事業を既存の広告事業に負けない規模に成長させるためには、事業領域を絞るべきではないと当時から考えていました。

また、ニーズベースで製品・サービス開発を進める上で活用する技術は、領域に縛られないということも理由です。FinTechと呼ばれる技術を教育領域の、EduTechをエンタメ領域の新規事業開発に活かすということは普通に起きていますよね。

IoTデバイス、AI、コスメ…扱う事業領域を絞らないからこそ、
柔軟な発想の掛け合わせから新たな事業が生み出せる。

更に言えば、今回の第二創業のタイミングで、事業領域を拡げています。quantumが関わる事業フェーズという方が正確ですかね。これまでは、イノベーションを起こしたい、新規事業開発が急務というパートナー企業の皆さんと一緒に開発を進めた事業のローンチをquantumが担い、ローンチ後にパートナー企業さんに買い取って頂くSpin-Out-In取引が多かったのですが、ローンチ直後では、その事業の将来価値を評価することが難しく、売却価格の算定と妥結に苦労をしました。そこで、我々は「0→1(ローンチ)」だけでなく「1→10(グロース)」まで手がけることにしました。事業が成長すると、一定規模のお客様がついてくるので、将来の伸びしろが具体的に見えてきます。つまり、事業の将来価値を見越した売買取引が可能になり、パートナー企業さんにとっては買い戻す理由が明確になる。そしてquantumは事業ローンチと成長の対価を適切に享受できる、まさにWIN-WINの取引が可能になるのです。しかし、1→10フェーズを担うとなると、会社設立やグロース施策の実施など、これまで以上に多彩な人的資源と多額の投下原資が必要になってきます。


――新たな投資も必要になる一方で、1→10フェーズでは、広告会社のプロモーション力を活用できるので、quantumの強みを発揮しやすくなると言えますよね。

高松 その通りです。だから博報堂グループの仲間達とも、いろんなかたちで連携を強化していきたいですね。


――quantum社としての具体的な事業目標はありますか?

高松 数値目標は公開していませんが、本年度からquantum内にFounderチームを作りました。我々のヒーローはquantum発の製品・サービス、事業であり、そこに心血を注いでいるFounderたちなので、Founderたちの意気込みに応え、事業成長を後押しする取組みをどんどんやっていきたいと思っています。


第二創業に合わせて掲げる、二つ目のスローガン,"founders first"。

――そのFounderは社内から輩出することを目指す?

高松 まずはもちろん社内からですが、そのうち試験的に外部から募集することも考えています。たとえば、ある企業と提携した新規事業をやろうとする際に、将来的にその会社の責任者(CXO)になることを前提として外部から人材を募集する「Founders in Residence」というプログラムを計画中です。


――それは新しい事業会社の社員として参画してもらうということですか?

高松 外部の人に参加してもらうときには、最初は副業でもいいと考えています。「退路を絶ってから来い」と言うのはカッコいいですけど、現実的にそれができる人は限られていますからね。事業が軌道に乗ったら時間が足りないと感じて、自分で働き方や雇用形態を考えると思います。そこは、その人の判断に任せたいなと。

あと、忘れてはならないのは、Founderはヒーローであると言っても、その周りにはさまざまなかたちで支える人々が必要であり、彼らの功績も適切に評価されなければならないということです。社内のエンジニア、デザイナーなどの専門家はquantumが誇る財産であり、大切な仲間ですから、事業が成長、成功した際には、Founderを支えた彼らもしっかりとメリットが得られるような制度と運用を考えています。

――具体的にはどのような制度が考えられますか?

社員として働く一方で、報酬の受け取り方を、例えば関与する事業の成果連動にするなど、報酬体系をフレキシブルな設計にすることで、Founderを支えるチームのメンバーにも創業のやりがいや醍醐味を体験してもらうことができるのではないかと考えています。こうした仕組みも本年度から入れていきたいと思っています。



――となると、このガバナンス体制の転換は、単に親会社が変わるというだけではなく、会社としてのまさに大きな節目でもあるのですね。

高松 まさにそうです。もちろん、Founderになるべくquantumに単身飛び込んで来る人、Founderとして単身飛び出していく人は、ある瞬間に勇気を持って決断した人であり、リスペクトされるべきです。しかし、それを支える人々だって欠かせない価値を提供しているわけで、そこも貢献度に見合った評価をされなければダメだと思います。


――スタートアップを作るために飛び出す人ばかりではなく、quantum自体をスタートアップとして成長させる人もいなければ、新しい人が入って来ないですからね。

高松 ある時期にたまたま良いメンバーがそろいましたというだけでは、属人的すぎて、会社としての限界があります。次々と多彩な起業マインドに溢れる人材が入社したくなるような魅力的な会社であり続けるためにも、会社の仕組みをもっとアグレッシブに変えていかなければならないのです。スタートアップスタジオという新業態はまだ世の中に定着していませんが、quantumとquantumのOBが活躍していくことで、スタートアップスタジオという業態の価値が世の中に認識される。そのために、これからもBe a Founder / Founders Firstの挑戦を続けていきたいと思っています。


<プロフィール>

高松 充 | quantum代表取締役社長兼CEO
2016年4月に、TBWA \HAKUHODOからスピンオフして(株)QUANTUMを創設。2019年3月までの3年間で、50社以上の大企業と新規事業開発に取り組んできた。QUANTUMの経営に加え、京友禅の老舗企業との共創による純国産の貴重なシルクを活用したスキンケアブランド「QINUDE」の立ち上げ、世界の水問題の解決を目指すスタートアップ「WOTA」へのハンズオン投資、「ペットとペットオーナーの暮らしを豊かにする=Quality of Animal Lifeの向上」をビジョンに掲げる(株)JPRとの共同事業開発など、常にFounderとして事業開発に従事。
好きな言葉は「New is better than good」。何歳になっても、自らも奮い立たせ、新しいことに挑戦し続けるためのモットー。