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the dialogue #4
『HiT』ローンチから1年。15年間開発フェーズだった技術が世に出た、はじめの1年を振り返る。

quantumのfoundersが、共に0から1を生み出そうとするパートナーや、尊敬する起業家、有識者との対話の中から、新規事業の可能性や、成長へのヒントを探っていくシリーズ [ the dialogue -つくりだす人との対話- ]。

今回は、昨年2月からquantumが提供しているコミュニケーション支援サービス『HiT』のキーパーソンであるチーフエンジニアの志和敏之と、『HiT』の共同開発者であるパナソニックインダストリアルソリューションズ社の山田亮さん、最初の『HiT』導入企業である結婚相手紹介サービス、ツヴァイの田邉雄大さんが集い、サービスローンチからの1年間を振り返り、今後の展開やビジョンを語り合う対談を行った。

『HiT』には握手やタッチといった、カラダに触れる自然な動作だけで認証、通信ができる〈人体通信技術〉が使われており、専用のデバイスを身につけた人同士が触れ合うことで、伝えたい情報を相手に瞬時に伝えることを可能にしている。まずはその開発についてquantumが関わることになった経緯から伺った。

志和 元々は、パナソニックさんが2003年から〈人体通信技術〉を研究、開発していたんですよね。それをうまくサービスや商品に落とし込めないかということで私たちに依頼が来まして。それが2018年の始めでした。

山田 パナソニックとしては、技術開発と用途を探す事業開発に15年もかかってしまったというのが正直なところで(笑)。当初はBtoBの形で、産業用途で想定していたんです。しかし様々な理由からこれがなかなか芽が出ず、オープンイノベーションで何かできないかとquantumさんに協業を持ち掛けました。

志和 そうしたパナソニックさんの経緯を伺っていたので、私たちもエンタメや一般向けサービスなど、少し切り口を変えてさまざまな企業の元へアイデアを持って行ったんです。その中でツヴァイさんに“婚活パーティーのマッチングに使えませんか?”と提案したらすぐにいい反応を示してくれて。

田邉 弊社は結婚相手紹介サービスとして、条件マッチングや価値観マッチング等によるご紹介のほかに、直接の出会いの場として会員様向けの婚活パーティーも頻繁に行っています。婚活パーティーというのは、だいたい似たようなパターンで進行するんです。もちろんそれも長年の蓄積による最適化されたシステムではあるのですが、運営サイドとしてはマンネリ化を避け、他社との差別化を図りたい思いもあり……。そんなタイミングで『HiT』の話を伺いまして、私も含め弊社の誰もが“これは面白い”と感じたんです。

山田 ツヴァイさんに導入した『HiT』のシステムは、パーティーで端末を腕に着用した男女が握手をするだけでお相手の基本情報がタブレット端末に表示されるというもの。握手ひとつで情報を共有できる。これがツヴァイさんが求めているものにうまくマッチしたんです。

田邉 従来の婚活パーティーでは、プロフィールシートに書いてある情報を元に交流して頂くのですが、シートでは年齢や居住地、収入といったごく限られた情報しかわかりません。そのためさらに相手の情報を知るために交流の時間を費やしてしまうケースも多いのですが、『HiT』を使えばそれが一瞬で済んでしまう。これは本当に画期的でした。

志和 握手を交わすことで新しいコミュニケーションが生まれますしね。婚活パーティーに新しいアクションを起こすことができる。それも狙いのひとつでした。

田邉 それで、4回ほど試験的に婚活パーティーに『HiT』を導入してみたところ、カップル成立率が顕著に上がったんです。4度の実施で『HiT』導入時はカップル成立率が平均63%となり、飛躍的に跳ね上がりました。この結果を見て正式に導入を決定した次第です。

山田 正直当初は、パーティーでいきなり相手と握手することに抵抗感を持つ出席者もいるのかな……?という懸念もありました。しかしいざ蓋を開けてみると、そうした声はほぼありませんでした。出席者の方にヒアリングすると、まったく抵抗感はなく、むしろ称賛の声の方が目立っていました。

田邉 今回のHiTを使ったパーティーでは女性会員がタブレットを持つ形で、男性会員がその元を回って握手をするんです。そこで最初にお互いの基本情報を共有できる。この点にまず高い評価を頂きました。その後トークタイムがあるのですが、その際、握手するごとにタブレットにトークトピックが表示されるシステムにして頂きました。特に男性参加者の中にはなかなか会話の糸口を掴めない方も少なくないのですが、トピックを会話のきっかけ作りにして頂けるんです。

山田 “結婚生活で大切にしたいことは?”“将来はどこで暮らしたいか”“共働きを希望するか”など、初対面の相手に聞きたいけど聞きにくい質問ってやっぱりあると思うんです。でもタブレットに表示されるトークトピックであれば、ある意味システムのせいにして自然に聞くことができる。これが出席者からの評判が上々でした。

志和 そもそも、トークトピックは『HiT』のサービスのオプション的な感じで捉えていたので、ここまで評価を頂けるとは正直思っていませんでした。これはやってみて初めてわかったことで、私たちも勉強になりました。

田邉 あとはタブレットに表示するデータに関しても参加者の皆さんから多くのご意見を頂きました。当初、お互いの離婚歴の有無についてはデリケートな話題ということもあり、表示しない予定だったんです。しかし皆さんから是非入れてほしいとの声が相次いで、組み込むことにしました。やはり結婚相手を見つける場ですから、そうした情報はできれば先に知っておきたいと。今まではせっかくパーティーで仲良くなっても、2人になったときに大事な情報を初めて知り、結局交際や結婚にまで至らなかったケースもありました。『HiT』を使うことでそのリスクを避けることも可能になりました。

山田 婚活の場で皆さんが求めていたことが『HiT』で思った以上にクリアにできるんだなと。それはいざサービスを開始して強く実感している部分です。お互いの大事な情報を早く共有できれば、パーティーで相手をよりじっくりと観察できるし、一歩踏み込んだ話題にも持っていきやすい。パーティーといっても時間は限られていますから、その中で皆さん濃い時間を過ごしたいんですよね。

田邉 早い段階で情報の部分でマッチングをして、その上で結婚を前提にお互いコミュニケーションを深めていける。『HiT』の導入が“早く結婚相手を見つけたい。でもお互いのことはちゃんと理解したい”というニーズにうまくハマった感じはありますね。

志和 でも少しだけ心配なのが、そうしてどんどんカップルが成立して結婚なさると、その会員の皆さんは退会なさる訳で、その意味ではツヴァイさんのビジネス的にはどうなのかな、と……。

田邉 私たちのサービスは会員の皆さんに結婚相手を見つけて頂くのが最大の目的なので、結婚に至って退会なさるのは理想的な形なんです。そのことが私どもツヴァイの評価を高めることにも繋がりますし、口コミでも評判が広まっていくはず。結婚相手紹介サービスの新規入会者獲得は口コミによるものが多いので、弊社にとっては成婚率が高まることが一番。他社との差別化につながりますし、大きなメリットがあるんです。

志和 それを聞いて安心しました(笑)。『HiT』では今後、カップル成立率をさらに上げるために、トークトピックの部分をもう少し強化したいと考えています。握手した相手に応じてトピックが臨機応変に変わっていくとか、参加者の“こんな内容を話したい”という意向を反映させてトピックを自動生成するなど、よりパーソナライズされた内容にしていければと。

山田 例えばトーク内容などもデータに反映させて、“○○さんの最も相手に響くトークはこれ”といった部分まで見せられるようになると面白いですよね。会員様自身では自覚していなかった個性をデータ分析で掘り起こし、自信につなげていただく。婚活パーティーでの利用に限っても『HiT』をきっかけにできることはまだまだたくさんあると思いますよ。

志和 そのほかのシーンでの活用についても様々なお話をいただいています。ビジネスの分野ですと、例えば各分野の展示会で出展者と来場者に『HiT』のデバイスを着用してもらい、ビジネスチャンスにつなげてもらうといったプランが考えられます。互いが求めているものに最短距離でたどり着くためのツールとしてのポテンシャルは高いと思います。

山田 あとはオフィスでのコミュニケーションツールとしての可能性。握手をすることでお互いの価値観や考え方を共有し、理解を深めていく。上司に言いづらい気持ちも『HiT』があれば伝えられるみたいな。社内の風通しを良くしていくのに『HiT』を活用できればいいですよね。

田邉 ツヴァイでの展開に関しては、以前より各分野の企業や自治体とも連携して、社内や団体内の婚活パーティーを企画および運営しているので、そちらでも『HiT』を導入していければと考えています。さらに幅広く企業や自治体に婚活パーティーを提案していく際にも、『HiT』のマッチング率の高さは大きな武器になりますので。公表できる範囲では、埼玉県幸手市が主催する婚活パーティーへの導入を計画しています。特にこの件に関しては何としてもマッチング率と成婚率を上げたいんです。まさに“幸せな手”と読む場所でのパーティーですから(笑)。『HiT』のコンセプトにぴったりな場所なんです。

山田 『HiT』は昨年、パナソニックの社内アワードである、驚きと期待、チャレンジ精神に溢れる新商品やサービスを厳選する〈Wonder賞〉を受賞しました。それだけグループ内でも期待されているという表れですし、今まで活用できなかった技術を1年ほどの開発期間でサービス展開に持っていけたスピード感も評価されている。このあたりquantumさんと組んだことがやはり大きかったと思っています。

田邉 私も志和さんのフットワークの軽さ、発想の柔軟さにはいつも驚かされています。

志和 ありがとうございます(笑)

山田 quantumさんと組んで感じたのが、常にユーザーや生活者の視点で物事を考えてくれること。われわれはまずは技術ベースでアイデアや市場を検討してしまう傾向がありますが、それとは真逆のアイデアが生まれるんですよね。
『HiT』に関しては、“この技術で新しいコミュニケーションを生み出そう“というビジョンをアイデア出しの段階から両社で創造し共有できたのが大きかったと思っているのですが、そのベースとなったのが“人体通信を分解したら、人が、体で、通じて、信じるですよね“という話で。“人を信じる“ことの究極の形って結婚であり、そこにつながる婚活だ、と。名称から市場を考える発想はquantumさんと一緒に事業化を目指さないとイメージできなかったと思います。

志和 ユーザーや生活者の視点に常に軸足を置くのが我々の強みでもあるので、そこを褒めていただけるのは嬉しいです。本日はありがとうございました。今後も『HiT』、がんばっていきますのでよろしくお願いします!


HiTについて詳しくはこちら→ https://quantum.ne.jp/works/246/


写真左より
山田 亮 氏 |
インダストリアルソリューションズ社 事業開発センター IoT事業開発部 企画推進課

田邉 雄大 氏 |
株式会社ツヴァイ 成婚推進本部 成婚推進部 パーティグループ・マネージャー

志和 敏之 |
quantum チーフエンジニア/ HiT事業責任者